- 日本形成外科学会 認定専門医
- 日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
- 2016年 スキンリファインクリニック吉祥寺院院長 勤務
- 2021年 東京美容外科 銀座院院長 勤務
- 2024年 GLAMRULE CLINIC 銀座院 院長

アクアフィリング豊胸後に患部の腫れや痛みが増し、今すぐにでも膿を出して楽になりたいという状況かと推察します。 しかし、自己判断での排膿は感染を深部へ拡大させる危険な行為です。 医学的根拠に基づき、直ちに行うべき正しい対処法を解説します。
アクアフィリング(現在の名称:ロスデライン)の注入部位が感染を起こしている場合、内部では充填剤と組織が複雑に癒着しています。
表層に見える膿だけを排出しても、根本的な解決には至りません。 ご自身で針を刺したり圧迫したりすることが、なぜ医学的に危険なのかを解説します。
自己処理で使用する器具や皮膚表面には、目に見えない細菌が付着しています。消毒が不十分な状態で穿刺を行うと、既存の感染巣に新たな細菌を送り込むことになります。これにより、蜂窩織炎(ほうかしきえん)や膿瘍の範囲が拡大するリスクが高まります。
膿を出そうとして患部を強く圧迫すると、内圧によってアクアフィリングのジェルが正常な組織の隙間へと押し込まれます。これを「浸潤」と呼びますが、ジェルが筋肉や神経の隙間に入り込むと、後の除去手術の難易度を極端に高める結果となります。
膿を排出することで内圧が下がり、一時的に痛みが緩和されることはあります。しかし、感染源であるアクアフィリング自体が体内に残存している限り、細菌の温床はなくなりません。数日以内に再度膿が溜まり、そのたびに組織の破壊が進行します。
排膿を繰り返すと、皮膚と感染巣を繋ぐトンネル状の穴(瘻孔)が形成されることがあります。瘻孔ができると皮膚がひきつれ、治癒後も目立つ傷跡が残る原因となります。
局所の感染を放置、あるいは不適切な処置で悪化させた場合、細菌が血流に乗って全身に回る可能性があります。これは敗血症と呼ばれる重篤な状態で、発熱や悪寒戦慄を伴い、最悪の場合は生命に関わる事態となります。
感染による炎症が続くと、皮膚への血流が阻害されます。 皮膚が暗紫色に変色している場合は壊死の兆候であり、緊急の処置が必要です。 壊死した皮膚は再生しないため、切除が必要となり、整容的なダメージが大きくなります。
感染を起こしている場合、一般的な形成外科や皮膚科、あるいは注入を行ったクリニックを受診される方が大半です。しかし、アクアフィリングの感染除去は特殊な技術を要するため、標準的な治療では完治しないケースが多発しています。
一般病院では、切開排膿と生理食塩水による洗浄が行われます。 これは液状の膿を洗い流すことは可能ですが、組織に絡みついた粘性の高いアクアフィリングを除去することは困難です。感染源(ジェル)が残るため、抗生物質を止めると再燃するリスクがあります。
エコーやMRI検査を行う施設もありますが、画像診断だけでジェルの位置をすべて把握することは不可能です。特に感染時は炎症により組織の境界が不明瞭になっており、画像所見と実際の内部状態に乖離が生じることがあります。
アクアフィリングは注入後、被膜(カプセル)や線維性の隔壁によっていくつもの部屋(小部屋)に分かれます。カニューレ(管)を用いた吸引法では、これらすべての小部屋に行き渡らず、一部の感染源を取り残す可能性が高くなります。
内部を目視せずに操作を行う「ブラインド操作」では、癒着した組織を無理に剥がしたり、神経や血管を損傷したりするリスクがあります。また、取り残しを防ごうとして過度な操作を行うと、感染を周囲へ広げてしまうこともあります。
当院では、エコーやMRIといった画像診断機器をあえて保有しておりません。 それは、画像に頼るのではなく、執刀医の目で直接確認する「完全直視下除去法」こそが、最も確実な除去手段であると確信しているからです。
直視下除去法では、皮膚を切開し、感染した組織とアクアフィリングを直接目で見て確認しながら除去します。膿を含んだジェル、壊死した組織、癒着した被膜を、正常な組織と見分けながら丁寧に取り除くことが可能です。
ジェルが筋肉内や乳腺下へ入り込んでいる場合、盲目的な吸引では対応できません。 直視下であれば、入り組んだ部分にあるジェルも物理的に除去することができます。 これにより、再発の原因となる取り残しを最小限に抑えます。
| 比較項目 | 一般的なクリニック (吸引・洗浄治療) | 当院 (完全直視下除去) |
|---|---|---|
| 除去の確実性 | 不確実 手探りでの操作となるため、隔壁の奥にあるジェルや、組織に癒着した感染源を取り残すリスクが高い。 | おすすめの理由 確実性が高い
医師の目で直接確認しながら除去するため、癒着した組織や入り込んだジェルを確実に特定し、除去が可能。 |
| 感染再発リスク | 高い 感染源が体内に残存しやすく、抗生剤の内服を終了すると再び膿が溜まるケースが多い。 | おすすめの理由 最小限
感染した被膜ごと除去を行うため、再発の原因を根本から断つことができる。 |
直視下除去では皮膚切開が必要ですが、当院ではシワや皮膚の溝に沿った切開ラインをデザインします。
感染による皮膚のダメージが深刻化する前に手術を行うことで、傷跡を最小限に留めることが可能です。自己判断で膿を出そうとして皮膚を傷つけるよりも、結果的に整容面での予後は良好となります。