- 日本形成外科学会 認定専門医
- 日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
- 2016年 スキンリファインクリニック吉祥寺院院長 勤務
- 2021年 東京美容外科 銀座院院長 勤務
- 2024年 GLAMRULE CLINIC 銀座院 院長
「胸が硬くなった気がする」「動かすと痛みを感じる」「見た目に左右差が出てきた」。
シリコンバッグによる豊胸後、こうした変化に気づいたとき、多くの方が戸惑いと不安を抱えます。これは、カプセル拘縮(かぷせるこうしゅく)と呼ばれる合併症の可能性があります。
カプセル拘縮とは、体内でシリコンバッグを覆う被膜(カプセル)が異常に収縮し、胸の硬化や変形、痛みを引き起こす状態のことです。進行すると日常生活に支障をきたすだけでなく、外科的な治療や除去が必要になるケースも少なくありません。
本記事では、前兆として現れる症状、自分でできるチェック方法、医療機関を受診すべきタイミングなどを、セカンドオピニオンの立場から冷静に解説します。
胸が硬く感じられるのは、カプセル拘縮の初期サインである可能性が高いです。カプセル拘縮とは、豊胸バッグを包む被膜(カプセル)が過剰に収縮する状態です。その結果、胸がいつもより硬く、動きにくく感じられます。
明らかに硬さを感じた場合、この段階でも「除去すべきです」と判断するケースがあるため、早めに医療機関で触診や画像診断を受けることをおすすめします。
チクチクした痛みやわずかな圧迫感、違和感などは、カプセルが収縮しバッグに圧力をかけ始めている可能性のサインです。これは被膜が徐々に厚くなる過程で現れる症状であり、放置すると進行する恐れがあります。この段階からでも「様子見」に留めず、専門医が行うエコー検査などで確認すべきです。
胸の片側が高くなった、丸くなったなどの左右差や変形は、Baker分類のGrade III以上に進行している可能性があります。変形が見られた場合、たとえ痛みが軽度でもすぐに除去または修正を検討すべきです。判断を先延ばしにすると、より侵襲的な治療が必要になるケースが増えます。
胸に痛みを感じる場合、それはカプセル拘縮が進行しているサインであることが多いです。
痛みとは、身体が「何か異常が起きている」と知らせる重要な警告です。特に、豊胸バッグを入れている方が痛みを感じた場合は、被膜(カプセル)が収縮してバッグを強く締め付けている可能性があります。
この状態は、医学的には「Baker分類のGrade IV(グレードフォー)」と呼ばれる段階に該当することがあり、バッグの除去やカプセルの切除といった外科的治療が必要になるケースが多いです。
「我慢できるから大丈夫」と考えず、痛みがある時点で医師の診察を受けるべきです。
特に、「じっとしていても痛む」「押さえると鋭く痛む」「寝返りや動作で痛みが悪化する」といった症状がある場合は、すでに重度の拘縮が進んでいる可能性があります。
判断を先延ばしにせず、早めに専門医に相談してください。
カプセル拘縮の前兆に気づいたとき、最も悩ましいのが「このまま様子を見てもいいのか、それとも病院に行くべきなのか」という判断です。
胸の感触がわずかに変わったような気がするが、痛みもなく、見た目も明らかに変わっていない場合。この場合でも、定期的に状態をチェックし、数日単位で変化がないかを確認してください。
以下のような症状がひとつでもある場合は、できるだけ早く専門医を受診すべきです。
これらの症状が現れている場合、カプセル拘縮が進行している可能性が高く、放置すると悪化するおそれがあります。
比較的軽度のカプセル拘縮であれば、手術を伴わない治療も可能なことがあります。
たとえば、内服薬で炎症を抑えたり、超音波などで被膜の柔軟性を回復させたりする治療法があります。ただし、こうした保存的治療はあくまでも初期段階に限られ、進行を止めるための一時的措置にすぎません。
また、軽症のうちは自覚症状があいまいなため、「そのうち治るかもしれない」と考えがちです。
しかし、拘縮は自然に治ることは少なく、むしろ進行性の経過をたどることが多い疾患です。軽度であっても、医師による的確な診断と定期的な経過観察が重要になります。
次のような状態が見られる場合、カプセルの切除(カプセレクトミー)やバッグの除去・交換などの外科的手術が必要になります。
こうしたケースでは、放置すればするほど被膜が厚くなり、除去手術の難易度やリスクが高まることがあります。そのため、重症化する前に適切なタイミングで手術を行うことが、体への負担を軽減することにもつながります。
カプセル拘縮の多くは炎症反応によって起こりますが、ごく稀に重大な合併症が関与している場合もあります。
特に注意すべきなのが「BIA-ALCL(乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫)」と呼ばれる疾患です。
これは、バッグ周囲に溜まった水やしこりなどとして発見されることがあり、痛みや腫れ、赤みがある場合は単なる拘縮ではなく他の疾患も念頭に置くべきです。
また、バッグの中身が漏れたり、被膜内に石灰化が生じたりすることで、他の症状が併発することもあります。
症状の経過が通常と異なると感じた場合は、必ず画像診断(エコー・MRI)を受けるようにしてください。