豊胸手術を検討される際、「手術中は本当に痛くないのか」「術後はどのくらいの痛みがあるのか」といった不安を抱かれる方は少なくありません。使用される麻酔の種類によって、施術中の快適さや術後の回復スピードには大きな差が生じます。
本記事では、脂肪注入法およびシリコンバッグ法といった主要な豊胸術式における麻酔の種類とその特徴、痛みの程度、術後ケアのポイントまでを、豊胸を専門とする形成外科専門医の視点から詳しく解説します。
脂肪豊胸において、脂肪を採取する部位には局所麻酔やチュメセント麻酔が用いられます。
局所麻酔とは、施術部位のみに効果を発揮する麻酔で、意識は保たれたまま痛みを軽減できます。
チュメセント麻酔とは、大量の希釈された局所麻酔液を皮下に注入する方法で、脂肪吸引時の痛みや出血を抑える効果があります。
脂肪を胸部に注入する際は、静脈麻酔と局所麻酔を併用するのが一般的です。
静脈麻酔とは、点滴で薬剤を投与して眠ったような状態を作る麻酔で、意識がない間に施術が進行します。これにより精神的ストレスや痛みが軽減されますが、麻酔科医の管理が必要です。
当院では執刀医とは麻酔科医を配備し万全な状態で手術が行われます。
施術中は麻酔が適切に効いているため、痛みを感じることはほとんどありません。
術後は採取部と注入部に筋肉痛のような痛みが出ることがありますが、処方された鎮痛薬や圧迫ケアで多くの場合は管理可能です。痛みが強く長引く場合、何らかの異常の可能性もあるため、再診をおすすめします。
シリコンバッグを挿入する豊胸術では、全身麻酔または静脈麻酔に局所麻酔を併用するケースが多く見られます。
全身麻酔とは、意識を完全に消失させる麻酔で、痛みや記憶が残らないという利点があります。ただし、心肺機能への影響もあるため、術前の検査と管理体制が重要です。
近年注目されているのが、エクスパレル麻酔という長時間作用型の局所麻酔薬の活用です。術後72時間程度の鎮痛効果があり、通常の局所麻酔よりも術後の痛みが大幅に軽減されることが報告されています。特にバッグ挿入による深部の痛みに対して有効です。
シリコンバッグと脂肪注入を組み合わせたハイブリッド豊胸では、複数の麻酔を組み合わせて使用する必要があります。静脈麻酔や局所麻酔、エクスパレル麻酔などを適切に組み合わせることで、痛みの軽減と安全性の両立が図られます。
術後には胸部の張り感や筋肉痛のような鈍痛が数日から1週間程度続くことがありますが、日常生活には支障のない範囲です。痛みが強く、生活に影響が出る場合は、合併症や感染の可能性を考慮し、早めの診察が望まれます。
麻酔の種類 | 特徴 |
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局所麻酔 | 意識は保たれる。施術部位のみ無痛にできる。術後の回復が早い |
静脈麻酔 | 点滴で眠った状態にする。施術中の記憶が残らない。覚醒も比較的早い |
全身麻酔 | 意識消失、無痛。術中のストレスがないが、リスクも高め |
エクスパレル麻酔 | 72時間の長時間鎮痛作用。術後の痛み管理に優れる |
局所麻酔のみの場合は、施術中に意識があるため、不安感や緊張を感じることがあります。静脈麻酔は覚醒が早く、入院の必要がない点が利点ですが、痛みを完全に遮断するには局所麻酔との併用が望ましいです。全身麻酔や硬膜外麻酔は術中完全に無痛となるものの、体への負担が大きく、適応には慎重な判断が必要です。
麻酔に伴うリスクとしては、吐き気や眠気などの軽度の副作用のほか、まれに呼吸抑制やカテーテル関連の合併症が報告されています。特に硬膜外麻酔では、麻酔が効きすぎて排尿障害や感覚麻痺が生じることもあります。これらのリスクは術前の問診や麻酔科医による管理で最小限に抑えることが可能です。