- 日本形成外科学会 認定専門医
- 日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
- 2016年 スキンリファインクリニック吉祥寺院院長 勤務
- 2021年 東京美容外科 銀座院院長 勤務
- 2024年 GLAMRULE CLINIC 銀座院 院長
ヒアルロン酸注入は比較的手軽な美容医療として知られていますが、鼻翼基部への注入には特に注意が必要です。
顔面の血管が密集するこのエリアでは、誤った注入が原因で皮膚壊死といった重大な合併症を引き起こすリスクがあります。
実際、早期の異変に気づけなかったことで、瘢痕や変形といった後遺症が残るケースも報告されています。
本記事では、鼻翼基部におけるヒアルロン酸注入のリスクと壊死のメカニズム、初期症状、そして万が一発症した場合の治療戦略までを解説します。
鼻翼基部における皮膚壊死の原因のひとつに、ヒアルロン酸が血管内に誤って注入されてしまう血管塞栓型があります。
この場合、注入されたヒアルロン酸が血管を塞ぎ、血流が遮断されることで、組織に酸素や栄養が届かなくなり、結果として虚血性壊死が発生すると報告されています。
特に顔面動脈の鼻翼枝や上唇動脈との吻合部は塞栓の影響を受けやすいとされており、注意が必要なポイントです。
血管内に直接注入されなくても、ヒアルロン酸が過剰に注入されると、周囲の組織が膨張し、血管を物理的に圧迫することで血流が遮断される圧迫型の虚血が生じる可能性があります。
このタイプでは、注入量や注入スピード、層の選択が影響すると考えられており、技術的な配慮が求められます。
ただし、圧迫型単独で壊死を引き起こすかについては症例報告レベルであり、血管塞栓と組み合わさって発生するケースも多いとされています。
実際の臨床現場では、血管塞栓型と圧迫型が複合的に絡む混合型が存在する可能性が高く、また過去の注入歴による瘢痕や異物残存、製剤の性状(粒子サイズや粘性)による影響なども壊死リスクを高める要因になり得ます。
ただし、これらの因子が単独で壊死を引き起こすかについては明確なエビデンスが限られており、現在も検証が進められています。
鼻翼基部は解剖学的に血管が集中するエリアであり、顔面動脈や上唇動脈の枝が多数走行しています。
この部位では血管の吻合が複雑で、虚血に対して側副血行が補助的に働く可能性がありますが、注入が局所的に集中した場合にはその補償機構が十分に機能しない場合もあります。
壊死リスクの高い部位の一つとして多くの文献で言及されていますが、個々の症例での解剖学的変異や注入手技によってリスクの度合いは異なると考えられます。
使用する注入器具は壊死リスクに大きく影響します。
針は操作性に優れる一方で、血管を直接穿刺してしまうリスクが高くなるとされます。
カニューラは鈍針であるため比較的安全とされますが、挿入層や方向を誤ると血流圧迫による虚血が生じる可能性があります。
注入スピードはゆっくり、圧は最小限にするなど、基本的な安全手技の遵守が不可欠です。
注入量が多すぎると、組織に過度な圧力がかかり、血管の圧迫や組織内の血流障害が生じやすくなるとされています。
また、過去に同部位へ複数回注入を行っている場合、瘢痕化によって血行が阻害されている可能性もあり、同様に壊死リスクが上昇すると考えられます。
鼻翼基部に外科的手術歴や外傷歴がある場合、局所に瘢痕組織が存在することで血管の走行が変化していたり、既に血流が低下していることが想定されます。
これにより通常の注入量でも虚血を引き起こす可能性があるため、慎重な評価と施術が求められます。
製剤ごとの物性も重要な因子です。粘度が高く架橋の強いヒアルロン酸は、組織内での拡散が限定されるため、局所の圧迫が強まり血流障害を引き起こす可能性が指摘されています。
ただし、どの製剤が特にリスクが高いかについては症例報告レベルの情報が中心であり、今後の研究が求められます。
術者の解剖学的知識と慎重な手技が壊死の予防には不可欠です。逆血の有無や患者の表情・違和感への即時対応、ヒアルロニダーゼの常備など、安全管理体制の整備が求められます。
合併症の早期発見・対応が予後を左右するため、術中の緊張感を保つことが重要です。
注入直後、あるいは数時間以内に強い疼痛や皮膚の蒼白が出現することがあり、これらは虚血の初期サインと考えられています。
特に、通常の施術に伴う痛みと異なり、持続的かつ激しい痛みや灼熱感が見られる場合には注意が必要です。
また、冷感や感覚異常を伴うケースもあります。
虚血が進行することで皮膚の色調が変化していくことがあります。
一般的には白→紅→紫→黒と変化する傾向が報告されていますが、この順序は症例により異なる場合があり、一概には断定できません。
色調変化の出現は明確な虚血進行の兆候とされており、即座の対応が求められます。
虚血が進行すると、水疱が形成されたり、皮膚のびらん・潰瘍が起こる可能性があります。
これらは自然に治癒することもありますが、治癒後に瘢痕が残ることが多く、患者の美容的満足度に大きく影響します。
壊死の進行に伴い、注入部位だけでなく周囲にも腫脹や浮腫、感覚の鈍さが現れることがあります。
これらの症状は虚血の拡がりや重症度を示す指標ともなり得ます。
多くの報告では注入から数時間以内に異常が見られるケースが大多数ですが、1〜3日後、まれにそれ以上経過してから症状が出現する遅発型も報告されています。
そのため、術後1週間程度の観察が重要とされています。
ヒアルロン酸注入後に虚血が疑われる場合、最も重要な初期対応はヒアルロニダーゼの使用です。
これは血管内または血管周囲に誤って注入されたヒアルロン酸を速やかに分解し、血流の回復を図るための薬剤です。
注入範囲や製剤に応じて、適切な量を繰り返し投与することで、壊死の進行を最小限に抑える可能性があります。
最近では高用量パルス投与のプロトコルも提案されつつあります。
補助療法として、温熱による血流促進や軽度のマッサージを行うことがあります。これにより局所の血流がわずかに改善される可能性がありますが、主治療ではなく補助的対応として実施されます。
血流を改善する目的で、抗血小板薬やプロスタグランジン製剤を使用することもあります。
これらの薬剤は症例報告ベースで効果が報告されていますが、大規模なエビデンスはまだ確立されていないため、慎重に適応を判断する必要があります。
重症例では高気圧酸素療法により組織の酸素化を促進し、組織壊死を最小限にとどめる試みもなされています。
また、感染を防ぐための抗菌薬や、炎症制御目的でステロイドを使用することもありますが、これらも補助的治療に位置づけられます。
壊死が進行し、組織の自然回復が難しいと判断された場合、外科的に壊死部を除去する処置が検討されます。
必要に応じて皮弁や移植を用いた再建術が行われることもあり、審美面・機能面の両方での配慮が求められます。
治療の開始時期が予後に与える影響は非常に大きく、虚血発見から速やかにヒアルロニダーゼを投与した症例では良好な経過をたどることが多い一方、対応が遅れると組織壊死が拡大し、瘢痕や変形などの後遺症を残すリスクが高くなると報告されています。
そのため、術後の観察体制と即応準備が極めて重要です。

ヒアルロン酸注入後に起こるしこりや固まった部分は、放置すると形の崩れや違和感、最悪の場合、壊死してしまう原因になります。
当院では、これらを安全に溶解し、自然な形に修正することが可能です。
また、溶かした部位に対して再注入する際には、同じトラブルが起こらないよう適切な方法で施術します。さらに、溶解によりたるんでしまった皮膚に対してはタイトニングを行い、見た目のバランスを整えます。

形成外科専門医であり、日本美容外科学会(JSAPS)の正会員として10年以上の経験を積んできた院長が執刀します。
これまで多くのヒアルロン酸後遺症の修正を手がけてきたため、トラブルが複雑なケースでも適切に対応可能です。
専門性の高い医師が施術を行うことで、安全性と仕上がりの満足度を両立しています。
当院では、海外からお越しの患者様にも各種美容医療を安心して受けていただける体制を整えております。院長が英語で直接ご説明できるほか、中国語など多言語の通訳サポートもご利用いただけます。
At our clinic, we have established a system that allows patients from overseas to receive a wide range of aesthetic treatments with peace of mind.
The director is fluent in English and able to provide direct explanations. In addition, multilingual interpretation support, including Chinese, is available.