- 日本形成外科学会 認定専門医
- 日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
- 2016年 スキンリファインクリニック吉祥寺院院長 勤務
- 2021年 東京美容外科 銀座院院長 勤務
- 2024年 GLAMRULE CLINIC 銀座院 院長
脂肪注入による豊胸術を受けた方にとって、「どのくらい脂肪が定着するのか」「いつ完成形になるのか」は非常に気になるポイントだと思います。
本記事では、脂肪豊胸の定着する流れと期間、定着率を高めるための術後の過ごし方、さらに二次注入のタイミングやバストを維持する生活習慣について、医学的根拠に基づき冷静に解説します。
脂肪注入による豊胸手術直後は、体内に注入された脂肪や手術による外傷反応によって、バストに一時的な腫れやむくみが見られます。
これは正常な生体反応であり、脂肪がまだ組織に定着していない状態です。
この時期のボリュームはあくまで一時的なものであり、見た目に惑わされず経過を観察することが重要です。
術後1ヶ月を過ぎると、脂肪細胞のうち生着可能な部分が血管新生(けっかんしんせい:新しく血管が形成されること)によって徐々に栄養供給を受け始めます。
このプロセスによって、実際に定着する脂肪が確定していきます。逆にこの時期に栄養供給が不十分な脂肪は壊死や吸収のリスクが高くなります。
最終的に脂肪の定着が完了するのは、一般的に術後3〜6ヶ月です。
この期間を過ぎると脂肪量の変化はほとんどなくなり、バストの形状やサイズも安定してきます。
この時点が「完成形」とされる理由は、吸収がほぼ終了し、定着脂肪が長期にわたり残ると判断できるからです。
脂肪注入による豊胸では、注入した脂肪のすべてが生き残るわけではありません。
一般的に生着するのは約30〜50%で、半分以上は体内に吸収されるか、壊死してしこりの原因となる可能性があります。この定着率は個人差も大きいため、術後のケアや体質が影響を及ぼします。
定着率を高めるためには、医師の技術と注入手法が非常に重要です。例えば、一度に大量に注入すると脂肪壊死のリスクが上がるため、少量ずつ分散して注入する方法が推奨されます。また、患者側の体質、特に脂肪の質や血流の良さも生着率に関与します。
高い定着率を目指す手法として「コンデンスリッチファット(CRF)法」があります。
これは、採取した脂肪から不純物や壊死しやすい成分を除去し、濃縮した良質な脂肪のみを注入する方法です。
ただし、どの方法であっても完全な定着を保証するものではなく、再注入が必要になる場合もあります。
術後は脂肪に栄養が行き渡るよう、カロリー摂取を意識的に増やすことが勧められます。
これは“デブ活”とも呼ばれ、一時的に体重を増やすことで脂肪の生着率を高めるという考え方です。特に術後1ヶ月はこの栄養供給が決定的な役割を果たします。
血流を悪化させる喫煙やアルコール、急激なダイエットは脂肪の定着を妨げます。
喫煙は血管収縮を招き、注入脂肪への酸素供給が不十分になるため、壊死や吸収の原因になります。
術後1ヶ月はこれらの行為を控えるべきです。
術後のバストは非常にデリケートな状態です。
冷却しすぎると血流が滞り、脂肪の定着が妨げられます。また、強いマッサージや圧迫も避け、ブラジャーの選択にも注意を払いましょう。ソフトな着用感の下着が望ましいです。
脂肪の定着が完了していないうちに再度注入を行うと、前回の脂肪が壊死する可能性があります。
そのため、再注入は術後6ヶ月以上経過してからが適切です。これは、最初に注入した脂肪の状態を確実に見極めるための最低限の期間とされています。
バストの左右差や凹凸、しこりの形成などが気になる場合は、自己判断で経過を見ずに、専門医に相談すべきです。
脂肪が定着していない状態であれば、修正注入や除去といった対応が必要になることもあります。問題を放置すると、さらに複雑な治療が必要になることもあります。
定着した脂肪は、自身の体の脂肪として残ります。
そのため、大幅な体重減少はバストサイズにも影響を与える可能性があります。バストのボリュームを維持したい場合は、術後も体重を大きく変動させないことが望ましいです。
加齢による代謝の低下や、ダイエットによる脂肪減少は、定着後のバストにも影響を及ぼします。
とくに40代以降はホルモンバランスの変化もあり、体脂肪の分布が変わることがあります。長期的に美しいバストを保ちたいのであれば、日常のケアや生活習慣の見直しが欠かせません。