- 日本形成外科学会 認定専門医
- 日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
- 2016年 スキンリファインクリニック吉祥寺院院長 勤務
- 2021年 東京美容外科 銀座院院長 勤務
- 2024年 GLAMRULE CLINIC 銀座院 院長
シリコンバッグによる豊胸手術を受けてから10年が経過した。
そんなタイミングで、「このまま放置していても大丈夫なのか」「交換や除去が必要なのでは」といった不安を抱える方は少なくありません。
実際、インプラントは半永久的なものではなく、経年劣化や体の変化に伴い、再検討が必要になる場合があります。本記事では、美容医療に対する中立的な立場から、10年後のシリコンバッグの状態、リスク、検診や交換の必要性について、冷静かつ専門的な視点で解説します。
シリコンバッグの耐用年数は、一般的に「10年程度」が目安とされています。
これは米国食品医薬品局(FDA)が公表している基準に基づいています。ただし、10年を超えて使用しているからといって、必ずしも交換が必要になるわけではありません。バッグが正常に機能しており、症状や異常がなければ継続使用も可能です。
近年では、コヒーシブシリコンなどの進化した素材により、従来よりも耐久性が向上しています。これにより、10年以上問題なく維持されている症例も少なくありません。とはいえ、経年劣化は避けられないため、経過観察と定期的な検診が重要です。
シリコンバッグは体内に挿入される異物であるため、経年による素材の劣化は避けられません。
実際、FDAの調査では「11年以内に片方のバッグが破損する確率が一定程度存在する」と報告されています。
破損は必ずしも激痛や腫れなどの明確な症状を伴うわけではなく、無症状のまま進行するケースもあります。
症状が出ないまま、検診で初めて破損や内容物の漏れ、硬化(被膜拘縮)が判明する場合もあります。このため、見た目や感覚に異常がなくても、画像診断による確認が必要です。
Motiva(モティバ) | FDA認可を受けたシリコンバッグ |
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PERLE(ペアル) | 40年以上の実績があるシリコンバッグの最新版 |
10年という年月の中で、加齢や体重の増減によってバストの皮膚や脂肪組織に変化が生じます。皮膚のたるみによってバッグだけが浮き出るように見える、あるいはバッグの位置がずれるなど、外観上の問題が現れることもあります。
また、左右差が目立つようになったり、触感が不自然になるといった美的変化も見逃せません。こうした変化が見られた場合は、美容面だけでなく安全性の観点からも、再手術やバッグの調整・交換が検討されるべきです。
豊胸術後は、見た目に異常がなくても、年に1回の定期検診を受けることが推奨されます。検診では、超音波(エコー)検査やマンモグラフィー、MRIなどを用いて、バッグの状態を画像で確認します。
特に10年を過ぎた時点では、破損や被膜拘縮、炎症といったトラブルが発生するリスクが高まります。無症状であっても早期発見ができるよう、定期的なチェックが必要です。
以下のような症状が見られる場合、バッグの交換または除去を検討すべきです。
痛み | 慢性的または触れただけで痛む場合 |
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硬さ | 被膜拘縮による硬化 |
左右差・変形 | 形の不均衡、輪郭の不自然な変化 |
炎症や赤み | 感染やアレルギーの可能性 |
また、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)などのまれな疾患リスクも報告されており、これらの兆候が疑われる場合には、迅速な診断と対応が必要です。
バッグの寿命を考慮すると、10〜15年を一つの節目とし、症状の有無にかかわらず交換を検討する時期と考えるべきです。その際、シリコンバッグを再度挿入するか、自家脂肪注入など別の方法に切り替えるかは、年齢や体型、健康状態によって判断されます。
シリコンバッグが体内にある限り、日常的な観察が重要です。バストの形や硬さ、左右差、痛みの有無などを日々チェックし、少しでも異常を感じたら速やかにクリニックの診察を受けるべきです。
特に「痛み」は見逃してはいけないサインです。痛みが出ている場合、バッグの破損や拘縮の進行が疑われるため、基本的には除去を前提とした診断と治療が必要になります。
術後の初期は1週間・1か月・3か月ごとに検診を受けるのが基本です。その後、症状が落ち着いていても1年に1回は検診を受けるべきです。
バッグに関するトラブルは早期発見が非常に重要です。画像診断でしか確認できない破損や被膜拘縮は、無症状のまま進行することがあるため、定期検診を怠ることで重症化するリスクが高まります。
バッグの素材や挿入方法によって、術後の経過や10年後の状態に大きな差が出ます。コヒーシブシリコンとは、粘度の高いジェル状のシリコンで、破損時にも内容物が漏れにくい素材です。
また、筋肉下にバッグを挿入する方法は、表面に浮き出るリスクが少なく、拘縮の予防にもつながります。さらに、表面にテクスチャ加工(凹凸処理)が施されたタイプは、被膜拘縮の発生率を低下させるとされています。
これらを踏まえ、10年後のリスクを最小限に抑えるためには、術前の素材・手法の選択が極めて重要です。