- 日本形成外科学会 認定専門医
- 日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
- 2016年 スキンリファインクリニック吉祥寺院院長 勤務
- 2021年 東京美容外科 銀座院院長 勤務
- 2024年 GLAMRULE CLINIC 銀座院 院長
近年、手軽さから広まったヒアルロン酸豊胸ですが、注入後のしこりや感染症、石灰化などのトラブルが後を絶ちません。 実際、フランスでは2011年に公的に禁止され、米国FDAも豊胸目的の使用を承認していません。
しかし日本では法的規制がないため、営利を優先する一部のクリニックではいまだに行われているのが現状です。
グラムルールクリニックでは、患者様の将来の健康を守るため、ヒアルロン酸豊胸を全面的に禁止しています。また、他院で受けてしまった方への「除去・修正治療」を専門的に行っています。なぜこれほどまでに危険視されるのか、医学的根拠に基づき解説します。
米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)では、ヒアルロン酸を豊胸目的で使用することは未承認とされています。
未承認とは、その用途において医薬品や医療機器の安全性・有効性が公的に認められていない状態のことです。
FDAは、ヒアルロン酸を顔面や手などのしわ治療目的では承認していますが、豊胸に対しては承認しておらず、この用途での使用を強く警告しています。
法律で明確に禁止されているわけではないものの、未承認であるということは、医師がその目的で使用することが事実上許されないという意味です。これは実質的な禁止状態に近いと解釈されます。
一方、フランスでは2011年、美容目的でのヒアルロン酸豊胸が明確に禁止されました。これは、注入後のしこりや炎症、画像診断への影響といった合併症が多く報告されたためです。
EU各国でも同様に、美容目的での胸部注入に対し厳しい規制が設けられており、施術の中止を明示的に求める動きが広がっています。
欧米諸国がこれほど厳しく規制する中で、なぜ日本ではいまだに多くのクリニックがヒアルロン酸豊胸を行っているのでしょうか? その最大の理由は、日本の「自由診療(保険外診療)」における法規制の抜け穴にあります。
日本では医師の裁量権が広く認められており、海外で禁止されている薬剤や未承認の治療法であっても、医師が「自己責任」として輸入し、患者様の同意があれば使用できてしまいます。これを「適応外使用(オフラベル)」と呼びます。
この仕組み自体は新しい治療法を取り入れるために必要な側面もありますが、美容医療においては「営利目的」で悪用される温床となっています。 国が明確に「違法」としない限り、学会がどれほど警告を出しても、「手軽で儲かるメニュー」として提供し続けるクリニックがなくならないのが、日本の悲しい現状です。
ヒアルロン酸は本来、関節や皮膚に含まれる保湿成分で、体内で分解される物質です。
しかし、豊胸に用いる場合は大量に注入する必要があり、これが被膜を形成し、しこりや硬結(硬くなること)を引き起こす原因となります。
特に皮膚の浅い層や乳腺下に注入された場合、触れたときに明確にわかる異物感が残ることがあります。
しこりは自然には消えず、除去手術が必要になることもあります。
ヒアルロン酸は異物反応を引き起こす可能性があり、注入部位で感染や炎症が慢性化することがあります。
発赤、腫脹、痛み、膿の排出などの症状が数日以上続く場合は、感染が進行している可能性があり、迅速な処置が求められます。特に無菌操作が徹底されていない環境ではリスクが高まります。これらの症状が出た場合、基本的には注入物の除去が必要です。
ヒアルロン酸は時間とともに体内で分解・吸収されますが、その速度は部位や体質により異なります。
そのため、左右で形の差が出てくる「非対称性」が発生することがあります。
この左右差が目立つ場合には、再注入や修正手術が検討されますが、毎回同じ結果になるとは限らず、理想的なバストラインの維持が困難となる可能性があります。
ヒアルロン酸は注入後も流動性を持つため、時間の経過とともに予定していない方向に移動することがあります。
重力や筋肉の動きの影響を受けやすく、バストの輪郭が不自然になる原因となります。
例えば、胸の下部に移動して垂れた印象になったり、脇に流れて広がった印象になったりするケースもあります。
ヒアルロン酸を注入した部位は、マンモグラフィーの画像診断において「デンスブレスト(高濃度乳腺)」と似た影響を与え、がんの発見を妨げる可能性があります。
また、注入物が石灰化し、がんとの鑑別が難しくなることもあります。そのため、乳腺外科医がヒアルロン酸の存在を知らずに検査した場合、誤診や見落としにつながるリスクがあります。
本来分解されるはずのヒアルロン酸でも、大量注入や硬化によって体内に長期残存することがあります。
ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を分解する酵素)を用いても完全には除去できないケースがあり、切開して摘出する必要が出てくることもあります。
特に、乳腺や大胸筋周囲にまで浸潤している場合は、摘出の難易度が高くなり、健常組織への影響も避けられません。
ヒアルロン酸豊胸はクリニック側にとって、非常に「都合の良い」メニューです。 手術時間が短く、特別な技術がなくても注入でき、原価に対して高額な費用を頂けるため、利益率が高いのです。
形成外科専門医として、「数年後に必ず崩れるとわかっている施術」を患者様に提供することは、医師の良心に反すると考えています。
当院ではこれまで、他院でヒアルロン酸豊胸を受け、数年後に「胸が変形した」「痛くて眠れない」「しこりが怖い」と泣きながら来院される患者様を数多く診てきました。
その方々の胸の中にあるのは、かつての美しいバストではなく、癒着し、炎症を起こした組織です。それをメスで切開し、正常な組織を傷つけないよう慎重に取り除く手術は、注入の何倍もの時間と技術を要します。
脂肪注入とは、自身の脂肪を採取して胸部に注入する方法です。自己組織を使用するため異物反応が少なく、自然な仕上がりが期待できます。
特に、痩身目的での脂肪吸引と組み合わせて行える点がメリットです。
一方で、生着率(定着する割合)は50〜70%程度とされており、一定期間でのボリューム減少が予想されます。脂肪が壊死してしこりになるリスクもあるため、適切な注入量と手技が求められます。
シリコンバッグは長年の臨床実績があり、サイズの調整がしやすいのが特徴です。
近年では表面の質感や形状に改良が加えられ、自然な触感と外見を両立しやすくなっています。
バッグ破損やカプセル拘縮(被膜の収縮)などのリスクもありますが、定期的な検診と適切な管理によって多くのトラブルは防止可能です。
また、適切な位置に挿入されれば、検診への影響も最小限に抑えられます。
ハイブリッド豊胸とは、シリコンバッグと脂肪注入を併用する方法で、それぞれの利点を生かしたアプローチです。
バッグによりバストのベースサイズを確保し、脂肪で表層をカバーすることで、より自然な質感が得られます。
術後のダウンタイムは2週間前後で、痛みや腫れは個人差がありますが、通常は徐々に軽快します。
特に自然さと確実なサイズアップの両立を望む方に適しています。
ヒアルロン酸によってしこりや感染が生じた場合、まず必要なのは正確な診断です。
画像診断(エコー・MRIなど)で範囲や深度を把握し、状態に応じて処置を行います。
軽度であればヒアルロニダーゼによる分解を試みますが、改善が見られない、または感染が進行している場合には、切開による摘出が必要です。
この判断は早期であるほど組織へのダメージを最小限に抑えることができます。